2005-12-31

2005年を振り返る

2005年の夏山シーズンは大雪山のガイド業界全体にとって、かなり厳しい状況でした。ガイドの仕事の大部分を占る旅行代理店主催の団体登山ツアーの本数が激減してしまったのです。知床にお客さんが流れたとか、昨年夏の旭岳ロープウェイ1ヶ月運休が影響したとか、雪解けが遅かったために敬遠されたとか、原因は色々と推測されていますが、ともかく最大の稼ぎ時に最大の顧客が来なかったことは死活問題になりかねない大問題だったのです。

そんな中、我が山楽舎BEARは幸いにも業績微増という結果を残すことができました。これは数年前から道外・道内・地元を問わず個人顧客を重視し、旅行代理店の団体ツアーに依存しない体勢を整えていたためです。

2月・3月と2ヶ月連続で東京からスノーシューをしに来てくださった方がいらっしゃいました。6月に来て大雪山を気に入っていただき、9月の紅葉を見に再訪してくださった方々からは、来年また来てくださるというありがたいお言葉をいただいています。道外から複数回足を運んでくださるというのは本当にありがたいものです。道内でも、遠く札幌から足繁くツアーにご参加くださる方もいらっしゃいますし、地元には年間5回以上参加というお客様が数多くいらっしゃいます。中には10回近くにもなる方すらいらっしゃいます。そういう一人一人のお客様に支えられ、厳しい一年を乗り越えられたのです。

つい先頃、山楽舎BEARは創立4周年を迎えました。今年以降も厳しい状況は続くでしょうが、これからも一歩一歩着実に歩んで行きたいものです。目指すは創立50年。金文字の立派な表紙のついた舎史を編纂し、若い後輩ガイド達に「あのころはのう・・・」などと昔語りをするのがささやかな夢です。

2005-12-29

スキーには最高の日

よく降った昨日。そして朝から好天の今日。スキーには絶好の日ではありませんか。札幌は手稲山の定番山スキールートに行くことにしました。9時にスタート地点に到着。既に年末休みに入っているからなのか、平日だというのに既に5~6台の車が停めてありました。準備中さらに3台やってきて、駐車スペースがぎゅうぎゅう言ってました。

それにしてもやっぱり冬の青空はいい!あまり見られないだけにありがたさも一入。枝という枝にふうわりと積もった雪に陽光が射す様と言ったら。急傾斜の登りだって気がつけば終わっているほど。

一番の斜面はここ。そこそこの傾斜と木のまばらな広い斜面。私はこの上のピークまで行き、上から下まで一気に滑り降りて来ましたが、他の方々は皆ここだけ登りかえして何度も滑っていたようです。積雪はそこそこありましたが、やや重い感じがしました。今日の札幌はかなりの冷え込みを記録しましたが、それでも大雪山に比べると暖かいですものね。ただ、街のすぐ近くに手軽に滑られる山スキールートがあるのはいいものです。

 今日の手稲山
・気温:-4.5℃
・風速:0.6m/s
 (スタート地点・12時)

2005-12-28

行きはよいよい

札幌は藻岩山に来ております。藻岩山は札幌市街に面する531mの山です。山にはロープウェイやら観光道路やらスキー場やらがあり、開発し尽くされた感がありますが、実はにぎわっているのは山の片面だけで、もう片面には天然記念物の原始林が残されています。この原始林側の登山道を使い、山頂を目指しました。

予報では大荒れの天候とのことでしたが、行きがけの尾根からは、この通り、青空を背負った藻岩山が見えていました。尾根から左を見ると札幌の街並みが、右を見ると連なる低山が、それぞれ広がっています。こういう対照的な景色は大雪山では見られません。新鮮です。

原始林にはいきものもうろちょろしています。たとえばほら、ゴジュウカラ。カメラに合わせてポーズを取ってくれました。そう珍しい鳥ではありませんし、写真だっていくらでも撮れると思っていたのですが、ちょっと調べてみると、山口県では準絶滅危惧種として指定されているようです。意外な事実。今現在北海道ではどこにでもいるからといって、高を括っていてはいけないのでしょう。都市の中に原始林が残されているというのはありがたいことです。

そんなこんなで暑いくらいの日差しを浴びて汗だくになりながら所要2時間。山頂に到着しました。山頂ではレストハウスが登山者を優しく迎えてくれます。そう、山頂は原始林側ではなく世俗側にあるのです。そのテラスでお弁当を食べていると、にわかに吹雪き出してきました。さすがに天気予報は伊達じゃない。下るにつれてひどくなる雪。ああ、登りはあんなにたのしかったのに・・・。一寸先は雪とはこのことなんですね。

 今日の藻岩山
・気温:-5.0℃
・風速:0.5m/s
 (山頂・12時)

2005-12-26

掘り出し物


昔、「BACKPACKER」という雑誌で紹介されていたビデオ。シリーズもので、かなりの巻数が出ていて、中にはアラスカやアメリカ西海岸の山旅紀行といったタイトルもあり、いたく興味をそそられたものです。

記事を読んで以来ずうっと欲しいと思っていましたが、当時は今のようにネット通販で気軽に海外から商品を買い寄せることができない時代でしたし、お値段も結構していました。内容も見ずに注文する勇気もなく結局買えずじまいでした。

ところが昨日。

札幌の石井スポーツが移転前の閉店セールをしているというので、ちょっとのぞきに行ってきました。お目当ての商品があるわけでもなく、さしたる期待もしていなかったのですが、

あったんですよ。そのビデオが。ごっそりとワゴンの中に。

押し入れの中から幼い頃大事にしていたおもちゃを見つけたとき、きっとこんな気持ちになるのではないでしょうか。それとも長いこと会っていなかった幼なじみと町中でばったりと再会したときの感覚でしょうか。ともかく、そんな懐かしいようなびっくりしたような気持ちになってしまったわけです。

しかも値札を見ると1巻300円。安すぎます。いくらビデオテープの時代が終わりを告げつつあるといってもこれはあんまりです。下手したらレンタルするより安いくらいです。

こんなにいいものがこんなに格安で売っているというのに、他のお客さんは誰一人としてこのビデオに見向きもしません。店内のにぎわいがウソのようにビデオの一角だけはなぜか閑散としています。ほとんど独り占めで選び放題。気がつくと4巻ほど抱え込んでいました。他にも10巻以上置いてあったので、せっかくだから手に入れておこうかなあ。

ちょうど昨日はクリスマス。思いがけず、いいプレゼントとなりました。

2005-12-24

まだまだこれから

今日の旭岳

・積雪:150cm
 (旧中間駅付近)
・気温:-14.0℃
・風速:6.0m/s
 (姿見駅・11時)
・姿見駅付近の積雪状況(↓)

と、まあそんなわけで、今日は今シーズン初のスノーシューツアーでしたが、ご覧の通り雪はあまり積もっていませんでした。姿見駅付近ではナナカマドやハイマツの頭が雪の上に飛び出していますし、姿見の池への遊歩道を示す鉄杭がまるまる見えていて、夏道を辿ることができるような状態です。12月も末になりましたが、冬はまだまだこれから、と言った感じです。

2005-12-22

負け惜しみ

冬至の今日。またまた好天でした。スキーを持って下見に行った帰り、午後3時50分、旭川近郊。夕焼けに染まる大雪山の山々が眼に飛び込んできました。紫がかった赤というのか、濃い桃色というのか。山に雪が積もり白くなるこの季節だけ、夕陽を映して染まる色。ここまで雲が無く、ここまできれいに染まることはそう何度もあるものではありません。

いつもは持ち歩いているデジカメを、こんな時に限って持っていないのは最早お約束。なんてこった・・・。絶好のチャンスをみすみす逃してしまうなんて。

でも、悔しくなんてないやい。だってこの眼とこの心に染まる大雪を焼き付けたんですから・・・。

2005-12-21

当者比2倍

久々の好天に誘われて、旭岳の姿を拝みに行ってきました。今日はスノーシューで旭岳温泉から姿見の池まで、夏道をたどって登ることにしました。まずは圧雪されたスキーコース沿いにたらたらと登っていきます。夏は濃緑一色に見える針葉樹の森も、こうして白い雪が積もると、とたんに賑やかになる気がします。特に青空の日は格別です。

第二天女が原からは圧雪のされていない斜面の急登です。いつもは圧雪車の入っている別コースを使って楽に登っていますが、今日はこの青空に誘われてふらふらとキツい方を選んでしまいました・・・。まだ雪が落ち着いていないため、片足に体重をかけると太腿くらいまで雪に埋まってしまいます。もう少し大きめのスノーシューだとまた違うのでしょうが、ここまで来て言っても詮無いこと。もがくようにして急な坂を登りました。冬とはいえ陽光は暖かく、登りと相まって暑いのなんの。一枚また一枚と脱ぎながら高度を稼ぎます。

すると。大変な後にはご褒美があるもの。晴れた日の雪景色はいつ見ても最高です。この景色の広がりは、楽なコースを選ぶと見られませんから、これだけでも頑張った甲斐があったかも。

森林限界を越えるあたりから、強風が吹きつけるため雪が堅く締まり、歩きやすくなっていました。最後に迎えてくれたのは旭岳。盛大な噴気にお姿は隠されていましたが。

結局登りに2時間たっぷりかかりました。夏なら1時間ほどで登れますから、2倍の労力がかかるということです。いい運動になりました。

 今日の旭岳
・積雪:165cm
 (旧中間駅付近)
・気温:-7.0℃
・風速:0.3m/s
 (姿見駅・13時)

2005-12-20

激写!

新しいスノーシューツアーの目的地を探すべく、旭川は嵐山へと行ってきました。いわゆる「下見」というやつです。駐車場あり、登りはそうキツくない、所要時間短め、展望よし、森の感じもよし、コース外を歩く楽しみあり、など項目をチェックしながら歩くわけですが、その途中、ある鳥の写真を撮ることができました。

右にも左にも、ほらこの通り。今まで姿を見ることはあっても写真に収めたことはなかったので、これは大収穫です。いやー感激です。うふふ。
え、どこに何がいるのかわからない?そんなことはないですよ。心の眼で見てください。ほらほら。見つかったでしょう?


クマゲラちゃん。こんな市街地のそばにいるなんて。まだ深い森が残されているということなのでしょうね。

2005-12-19

大雪

ここ何日か雪が降り続けています。たとえば車の雪をはらって、荷物を取りにもどっている間に、また積もっている。そんな具合にしんしんと降っています。大雪です。雪質はすっかり真冬のそれで、さらさらふわふわ吹けば飛ぶような軽い羽雪です。

となれば、積もった雪を確かめに山に行くのはお約束。スキーにしようかスノーシューにしようか迷いながらも、えいやっとスキーを選択。スノーシューはまた明日ということで。

旭岳ロープウェイの駐車場に着いてみると、車が一台もとまっていません。「強風につき運休」だそうです。これでまた静かな山を楽しめると思うと、降りしきる雪も吹きつける風もなんのその。がしがし登っていきます。ロープウェイ運休にもかかわらず、圧雪車がコース整備をしていました。スキーコースの状態は、10日前と比べると雲泥の差で、すっかり歩きやすく滑りやすくなっています。ただ、コース外はまだ雪が落ち着いていないようで、見た目以上に埋まります。深雪の中を自由に歩き回るには、もうちょっと時間が必要かもしれません。

旧中間駅付近では恒例の定点観測。
 2005年12月8日 2005年12月19日
 110cm 170cm

飽きもせず降り続ける雪は、11日間で60cm積もっていました。

このまま登り続けてロープウェイ姿見駅まで行く予定でしたが、森林限界に近づくにつれ風が強まってきました。風速計によると最大風速8.9m/s。この風速自体、そうたいしたことはないのですが、木々に遮られた場所でこれですから、この後森林限界を越えふきっさらしに出たらどうなることやら。ロープウェイ運休は伊達じゃない。と、勇気ある撤退を決め、すいっと滑り降りて行きました。

今日の旭岳
積雪:170cm
気温:-10.3℃
最大風速:8.9m/s
(いずれも旧中間駅付近・12時)

2005-12-17

年賀状

年賀状作成作業が終わり、あとはもう投函するだけになりました。これで無事元旦にお届けできるかと思うとほっとします。昔から年賀状といえば、年末ぎりぎりになってから出す、とか、年明けに来てから出す、というのが当たり前でしたから、こんなに早くできあがると不思議な気がします。

今年の年賀状はこんな↓です。二人からのご挨拶が中心で、イラストやら写真の類は一切ありません。この断然硬派なデザインは去年から採用されたものなのですが、一見年賀状かどうかわからないのが欠点でしょうか?「おめでとうございます」とか「2006年」などの定番語句すら入っていません。右上の「迎春」がかろうじて年賀雰囲気を醸し出してはいます。その分読みどころ満載で、非常識なほど文章が入っていますので、元日ののんびりとした時間に、ごゆるりと読んでいただけると幸いです。

画質を落としているので文章は読めないかと思います。詳しくは来年のお楽しみということに・・・

2005-12-13

これまためでたい

山楽舎BEAR4周年の陰に隠れながら、ひそかに記念日をもう一つ迎えました。12月11日をもちまして、当スタッフノートが1周年ですよ。よくぞ1年も書き続けてきたものです。スタッフ二人で書いた記事数は、2004年12月11日から2005年12月13日(今日)までの368日間で264。平均すると、1.4日に1回書いていることになります。1日1回更新には届きませんでしたが、とんでもなく忙しい時期もありながら、よくこれだけ書いたものだと自画自賛したくなります。いや、してしまいましょう。よくやった!これからも旬の大雪山情報や思いの丈などをできるだけ1日1回ペースに近づけながら綴っていきたいと思います。

2005-12-12

めでたい

まあ、そんなわけで、わが山楽舎BEARもめでたく4周年を迎えたのです。

ささやかな祝賀会には記念ケーキも登場し雰囲気を盛り上げました。実際には4周年記念なのに、“5周年”の文字が輝いているのはご愛敬。ここだけの話、代表自ら何周年なのか失念していたらしいですよ。ローソクも五本用意されていますし・・・。


おめでとうの声が飛び交う中、ローソクの火を吹き消します。披露宴のケーキ入刀みたいなもので、この体勢のまましばらくフラッシュを浴び続ける代表でした。

これから一年着実に成果を積み上げて、来年の“本当の5周年”記念を迎えたいものです。

2005-12-11

世界遺産・知床

 NHK-FMの日曜喫茶室で世界遺産の知床を取り上げていた。ゲストは作家の立松和平氏と北大名誉教授の石城謙吉氏。興味深い内容で昼過ぎから2時間ほどスピーカーの前で聞いていた。
 二人とも識者だけあって無批判に世界遺産指定を賛美することなく、それぞれの立場から地に足の着いた評価をしていた。立松氏は、漁師との長い付き合いの中から、漁業者の立場を無視した一方的な漁業規制が敷かれることのないように運営されるよう望んでいるということ。石城氏は、Tourismの語源はラテン語で聖地巡礼を意味することから、自然に対する畏敬の念を持って知床を訪れて欲しいと言う意見だった。お二人ともに、現在のツーリズムのありようを変えていくべきだという認識で一致していたのには共感を覚えた。砂防ダムの撤去やシカによる食害など、大雪山国立公園にも共通した問題点があり、「世界遺産」知床の今後の動きを注意深くフォーローしてゆきたいと思った。

2005-12-10

今日から五年目

 きのうは山樂舍BEARの創立記念日で、山関係者を招いてささやかな誕生パーティーを行った。

 12月9日は「山樂舍BEAR」の創立記念日ということになっている。正確に「いつ」設立されたかは今となっては定かではないのだが、2001年から記している「十年日記」のなかに、はじめて「BEAR」という名称が出てくるのが、2001年12月9日なので、この日を創立記念日ということにしている。
 その年の夏から秋にかけて旭岳や層雲峡の山関係者の間で、なにか山岳ガイドのための組織が欲しいね、という話が出てきて、何回か話し合いを重ねるうちに、とりあえず山岳ガイドの組織として立ち上げて、徐々に保全や啓蒙普及活動などの方面に手を広げていこうという結論になった。という訳で、当時フリーでガイドをやっていた佐久間と斎藤しのぶ氏(旧姓)が「山樂舍BEAR」を立ち上げることになった。
 何回かの話し合いを経て練り上げられた『ガイド組織設立にむけて』という文書には、「BEARのめざすもの」として以下のような記述がある。

 現在わたしたち山案内にたずさわるものは、マスツーリズムの機能の一部として、大量の登山客を一時期に山に案内し、場合によっては生態系の破壊に手を貸してしまっています。しかも旅行業界においても価格破壊ともいえる低料金化がすすみ、登山客を受け入れる地元に落ちるお金が減り、地域全体として見たばあい、芳しくない状況にあると言えます。このような現状を改善し、持続可能でローインパクトな登山のありかた・自然の楽しみ方を提案し、エージェントツアーをもふくめて、マスツーリズムからエコツーリズムへの橋渡し役をわたしたちは目指します。

 五年目に入ったいま、これまでの歩みを振り返ると、完全ではないものの概ね「めざすもの」に沿った活動をしてきていると言えるだろう。
 マスツーリズムが衰退の方向に進み、エコツーリズムが横ばいという現状を考えると、これからも山岳ガイドという商売はけして楽ではないとは思うが、時代の先を読みつつ、プログラムに参加してくださる方々のためにも活動を続けていきたいと、思いを新たにするのであった。

2005-12-09

今日は何の日?

いやーめでたい。実は今日は記念すべき日なんだそうです。私もつい最近知らされたばかりなのですが…。後ほど佐久間から一言あると思いますので、詳しくはそちらをお楽しみに。

2005-12-08

たっぷり旭岳

朝、目覚めると、窓の外に抜けるような青空が広がっていました。そっと東の方へ目をやると、期待通り、白く輝く旭岳。どんよりとした雲が山を隠すことが多い冬ですが、それだけにたまの快晴が素晴らしく感じられます。こんな日は一日の予定を変更して山に行くに限る、と締め切りの迫った書き物を放り出して、車に乗り込みました。

まずは、東川町内からの一枚。うちから1~2分ほどの道道沿いで撮りました。こんな景色を日常的に眺められるのですから、好きな山の麓に住むのは最高です。


続いて、忠別ダムのほとりから。長いトンネルの先にある駐車スペースに車を置き、ちょっと歩くと絶好の撮影ポイントがあります。もうすぐ試験湛水が始まるはずですが、ここからの景色はどう変わるのでしょう?


どんどんと登ってきて、これは旭岳温泉の入り口からです。温泉街もあまり奥の方へ行くと、近づきすぎて旭岳はよく見えなくなります。このあたりからがいいですね。


ここからはスキーで登ります。雪は1m以上は積もっていて十分滑走できますが、スキー場はまだ営業していないため、人はほとんどいません。ロープウェイを使わず歩いて登って滑るなんていうのは、一般的には物好きの部類ですから。

いつにもまして静かな山を、1時間半ほどかけて姿見の池まで登りきると、がんばったご褒美とばかりに旭岳が迎えてくれました。今日は風もないし、太陽は暖かいしで、旭岳を眺めながらのんびりお昼を食べることができました。


輝く太陽、広がる雪原、そしてその向こうには十勝連峰。


登りの苦労がウソのように、下りはスキーですい~っと滑り降ります。その後温泉に入って、麓の町に降りてきたのは午後3時半ころ。気分的には“昼下がり”という時刻ですが、冬至が近いこの時期、もはや夕暮れ時といっていいかもしれません。陽は傾き、山も朱色に染まり始めています。雪で白く覆われた山には、夕陽がよく似合うものです。


一日いっぱい快晴の旭岳を堪能したので、夜は締め切りと格闘することにします…。

2005-12-06

お久しゅう

10月18日以来しばらくご無沙汰していた旭岳温泉に行ってきました。7月から9月の間はいやというほど通う場所だというのに、かれこれ2ヶ月も行っていなかったとは、我ながら驚きです。

その間は、東大雪・北大雪の山に登りに行ったり、道東に山旅に出たりと、旭岳以外の山に御執心だったり、札幌や東京などの都会に魅入られていたりしたわけです。

そんな浮気者を、旭岳は見捨てることなくやさしく迎えてくれました。その証拠にほら、こんなにきれいな夕陽。

2005-12-05

恒例の

年に4回、「山楽舎BEAR通信」なるものを作成し、旭川市周辺にお住まいのお客さまにお送りしています。たかだか5ページ程度の小冊子なのですが、本業の合間にたった二人で作るとなるとなかなか大変なことです。テーマを決め、文章を書き、編集し、印刷し、発送するという作業を全て終える頃には毎回精根尽き果てています。

で、今日がその作業日でした。そして当然、あー…。疲れた…。午後1時から8時までぶっ通しで作業漬けですよ。プリンタの設定がうまくいかなかったり、MacとWindowsのフォントの違いが壁になったりで、飯抜きでがんばったのに、結局全部を終わらせることはできませんでした。続きはまた明日ということに…。素人作業は何かと大変です。

封筒の大きさに合わせて印刷物を折っている図

2005-11-30

東京にて

はるばる来ましたぜ、東京。冬になりどんよりした天気が続く北海道とは違い、真っ青な空が広がっていました。そして、予想通りに暖かく、ぽかぽか陽気です。地元のニュースでは「真冬並みの寒さ」と言っていましたが、三代続いた生粋の道産子にとっては「陽気」以外のなにものでもありません。散歩するには最高の一日です。

で、12月になったというのに紅葉が見事です。たとえばこの銀杏。明るい黄色と澄んだ空色がいい塩梅ですねえ。9月の半ばに大雪山の高山帯で最初の紅葉に出会ってから2ヶ月半。これが今年最後の紅葉見物になりそうです。

東京に来た目的は自然公園研究集会に参加することでした。会場は東京大学農学部。時間は午後1時から午後5時まで。せっかくこんなにいい天気だというのに、4時間屋根の下にいて、終わる頃にはすっかり暗くなっていることでしょう。そう思うともったいない気もします。住宅街の細道をくねくね練り歩きたい衝動を抑え、いざ場内へ。

研究集会はかなりの盛況でした。学生さんを含めると80人以上いたそうです。当初の予測よりも多かったらしく、準備した部屋からあふれかえらんばかりでした。自分と同じ興味を持つ人が全国から集まってきていると思うと、心強いような競争心が高まるような不思議な気になります。せっかくなので、ちょいと人脈作りに精を出して来ました。集会の内容については、またいずれ。

2005-11-29

わーい飛行機だあ

明日は東京へ行く日。国内線にはほとんど乗ったことがないもので、ちょっとどきどきしています。

海外に出るには選択肢はほぼ飛行機しかありませんから、国際線に乗るのはどうという気もしないのです。でも、国内の移動で飛行機を使うのは違和感というかなんというか不思議な気がします。18切符でいいよな…とか、フェリーでもいいし…とか、いっそのことヒッチという手も…などど思ってしまうもので。

でもまあ、せっかく乗るのですから、1時間ちょっとの空の移動を楽しんできましょう。

2005-11-27

お食事会

今年の夏山プログラムをつらつらと数えてみると、6月から10月までで全29ツアーが催行され、のべ101名様にご参加いただいていました。6月は例年にない残雪でツアー中止が続出し、7月は団体さんの引率や本州からいらっしゃる個人のお客様の予約でいっぱいだったことを考えると、29回という催行数はかなりがんばったものに思えます。そして、私たちのツアーに参加してくださる方が沢山いらっしゃることに、驚きと感謝の気持ちでいっぱいになります。

今日はそんな感謝の気持ちをこめて、今年の夏山プログラムにご参加いただいたお客様をお食事会にお招きしました。東川町のはずれにある静かなお店で、おいしいお食事と山の写真のスライドショーをお楽しみいただくという趣向です。
何度もツアーに参加してくださっているお客様もいらっしゃいますが、山ではなかなか長時間お話できません。こういう機会に時間を気にせず沢山お話しできると嬉しいものです。ふと気がつくと、あっという間に終了の時刻になっていました。

私と佐久間にとってはとても楽しいお食事会でしたが、皆様には素敵なひとときをお過ごしいただけたでしょうか?いつも山の格好でしかお会いしない私たちが、普通の服を着ている姿をご覧いただけただけでも、価値はあったのかなあと思います。

スノートレッキング詳細決定!

 お待たせしました。冬のスノーシュープログラムの詳細が決定しました。
詳しくはこちらをご覧ください。

2005-11-26

六本木アークヒルズ

 先日講演を聴きにいった「六本木アークヒルズ」のようすを『大雪ジャーナル』にアップしました。のぞいてみてください。

2005-11-25

東京出張

そもそも東京には今まで一度しか行ったことがありません。たしか十年ほど前、サッカーの試合を見に行って一泊しただけです。どこを観光するでもなく、ぶらぶらと歩いて時間をつぶし、夜の試合を見て次の日の昼には帰ってきた記憶があります。いや、だって、別に、特に行きたい場所なんてなかったんです。で、東京に関わったのはそれが全て。

それ以来、行く用事も行きたい気持ちもなかった縁もゆかりもない東京に、なんと月末再上陸することになりました。自然公園関係の興味深い研究会が開かれるということで、どうしても参加したい気持ちが重い腰を上げさせたのです。前回とは違い、今では東京に友人もいますし、登山用品店も見てきたいですし、ちょっと楽しみにしているところです。

研究会の詳細についてはまた後日。

2005-11-24

「希望の新芽」はわたしたちの手のなかに

 タンザニアのゴンベ国立公園で45年間に渡ってチンパンジーの研究を続けてきたジェーン・グドール博士が来日した。国連の平和大使もつとめる博士の講演を、11月20日、東京の「六本木アークヒルズ」へ聴きに行った。『「希望の新芽」はわたしたちの手のなかに』と題して行われた講演の要旨をまとめた。

2005-11-22

知らなかったその2

先日参加してきた「滅びゆく高山植物を守るための市民フォーラム」で、興味深い話を小耳に挟んできました。

北海道の条例で、“登山道外の歩行が禁止できるようになる”というのです。来年4月、アポイ岳が適用第一号になるとか。全くの初耳でした。今まで、登山道外を歩くことはマナー違反ではあっても法律にはなんら背くものではありませんでした。それは国立公園の中でも、特別保護地区でも同様です。ですから、登山道から外れ植生を踏み荒らしている登山者に対しても、その行為を禁止することはできなかったのです。もしそんな条例が施行されているとなると、これはかなり画期的なことです。

少々調べてみると、「北海道希少野生動植物の保護に関する条例」のことのようです。条文を読んでみると、「生息地等保護区」の中の「管理地区」の中の「立入制限地区」に立ち入ってはならない、となっています(第31条・第32条・第33条)。ずいぶん複雑な地区指定の過程が必要なものです。罰則もしっかりついていて、違反すると6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金(第54条)を科せられます。

アポイ岳では、絶滅寸前のヒダカソウを保護するために、平成18年4月から立入制限地区を設けるとのことです。登山道以外を全て立入制限地区に指定することで、結果として登山道から外れることが違法となります。

実際にはほとんどの登山者が登山道を外れるようなことはしませんし、外れている場合でも一言注意すれば大半は理解してくれます。ですから、この条例が有効であるのは、意識的に登山道から外れる人達に対してでしょう(たとえば盗掘業者のような)。また、稀少な動植物を本気で守っていく意思があるのだ、とアピールする役割もあるかもしれません。

いずれにせよ、今後のアポイ岳と条例の運用から目が離せません。

2005-11-21

知らなかったその1

おとつい旭川で「第7回 大雪山フォーラム」が行われていたとか。札幌で新聞を読んで初めてこういう催しがあったことを知りました。告知のポスターやチラシも見ていないですし、噂さえも聞いていませんでした。しばらく東川を留守にしているので、地元の話題にすっかり疎くなっているようです。

フォーラムの副題は「大雪山を世界遺産に」となっています。というわけで講演者には斜里町長の名が。はたしてこの日本で、自然地域を世界遺産に登録することが本当に良いことなのか?知床の現状について、ぜひとも当事者のお話を伺いたかったものです。

今週末は久々の東川。黒岳や富良野ではスキー場がオープンしたらしいですし、旭岳の状況が気になるところです。

2005-11-19

滅びゆく高山植物を守るための市民フォーラム


という催しが北海道大学内で行われるというので、札幌に滞在中なのを幸いと参加してきました。フォーラムは朝10時30分から夕方17時までという長丁場。大学の授業って毎日こんな感じに長かったっけ。思わず10数年前を思い出しながら、とはいえ学生時とは比較にならないほど熱心に話を聞きました。聞き込んできました。

内容は、もう驚くばかりの盛りだくさんさです。パネルディスカッションあり、事例報告あり、講演に至っては三つもあります。これだけ詰め込めば一日いっぱいかかるのも納得というもの。

なかでも利尻山の登山道補修に関する話は興味深いものでした。利尻山には縁がなく残念ながらまだ登っていないのですが、登山道の侵食・崩壊が激しいという噂は聞いていました。現状は想像以上の荒廃ぶりです。それに対して、昨年から土嚢設置による登山道補修が試験的に行われているそうです。補修の成果は今後の追跡調査にかかっていると思いますが、大規模工事によらない登山道補修を行ったこと自体が評価されるべきでしょう。

また、礼文島のアツモリソウ保護についての事例報告の中で、「礼文には沢山の研究者が調査に訪れるものの、その成果が還元されているとはいえない」という指摘がありました。これは大雪山でも言えることで、研究者と地元をどう結びつけるかは、やはり普遍的な課題なのです。以前書いたように、私たちはこの問題にしっかりと取り組んで行かなくてはなりません。

最後に一言、参加者の中に若い人が少ない、というよりはイナイ…。平日昼間に行われているわけでもないのに、どうしてなんでしょう?そもそも山に若い人がいませんもんね。自然公園や山岳の諸問題を考える上で、この現象は意外に大きな障害になるかもしれません。若い人、もっと山においで。

2005-11-16

シャッターチャンスは逃さない

ここ最近ずっと札幌でデータ解析作業をしていますが、昨日久々に東川に帰りました。東川町役場で開かれた会議に出席するためです。

帰るとなると、せっかくですから大雪山のお姿を拝みたくなるというもの。

早朝札幌を出発してから深川あたりまでは、降雪あり濃霧ありでそれはひどい天候でした。ところが、旭川から東神楽に入ったあたりで青空が見えだし山を覆っていた雲が消えたのです。おお、白く輝く大雪山。十勝連峰もいと美し。空の色も山肌も雲さえも、すっかり冬の気配です。冬らしい良い眺め。これはぜひ一枚押さえておかなくては。

でも結局、写真を撮るのはあきらめました。会議前の打ち合わせが始まる時間がぎりぎりまで迫っていたのです。それに「会議は午前中で終わるし、そのとき撮ればいいや」と思って。ちらっと不安もよぎりましたが、「大丈夫」と思って。

2時間ほどで会議を終え、見上げた空はまだ青く晴れていました。それでは、と絶好の撮影スポットに移動したところ、なんと山の方面にだけ厚い厚い雲が。ああ無念。

せっかくなので、いつもはほとんど撮らないキトウシの写真を。収穫が終わった田んぼと茶色に枯れたカラマツが初冬の雰囲気を漂わせています。この空が山まで続いていてくれれば…。

今日の一言「シャッターチャンスを逃さないように朝は余裕を持って出発する」

2005-11-13

里にも来た

1週間道東をめぐり、1週間札幌でデータ処理をし、昨日久々に東川に帰ってきました。ちょっとした飲み会があり、良い気分で寝床に入り、今朝起きてカーテンを開けてびっくり。
とうとう積もりましたなあ。今年はスキーとアウターを新調したので、じゃんじゃん冬になっていただきたいところです。

2005-11-10

立体登山道

9月に行った登山道侵食調査のデータ解析をようやく始めました。デジカメで登山道の写真を撮り、パソコン上で合成して立体モデルを作るという調査で、去年と今年の立体モデルを比較すれば、侵食によって流された土の体積がわかるという仕組みです。大雪山での写真撮影が終わり、今週から立体モデル作りに入りました。このモデル作りには、実はとても高価なソフトウェアが必要です。もちろん個人では買えませんので、北海道大学・地球環境科学研究院 所有のものを使わせてもらっています。そんなわけで、今週は毎日研究室通いです。

「登山道の立体モデル」といっても想像するのは難しいかもしれませんので、作業中の図を持ってきました。パソコンでちまちまちまちまと目の痛くなるような細かい作業を延々続けると、ようやっとこんな図ができあがります。これ、立体的になっているのわかりますか?登山道を斜め上から見下ろしているところです。で、立体モデルなので、視点は自由に変えられます。真横・真上から見るのはもちろん、地面の下からのぞき込むこともできます。

ぐるぐる回して楽しんでいても何なので、次の作業に入ります。お次はパソコン上の架空の登山道に線を引きます。登山道の上と下に青い線が何本も平行に引かれているのがわかりますか?この線に沿って架空の登山道を輪切りにして、それを横から見ると…

こうなります。登山道に引いた青い線の数だけこの輪切りが作られますから、線を引けば引くほど登山道の凹凸を詳細に知ることができるのです。

今日までで進んだのはここまで。これから昨年のデータとの比較に入る予定です。ちまちまちまちま目が疲れる作業が続きますが、頑張れ。頑張る。

2005-11-06

密やかに更新中 その2

道東山旅編、また密かに更新が進んでいます。やっと10月27日斜里岳・28日羅臼岳分ができあがりました。詳しくはそれぞれの日付をごらんください。
29日に知床五湖にも行っているので、その分も書く予定です。

2005-11-05

氷河期の生き残り

東川町の広報誌「広報ひがしかわ」の中に「大雪山の素顔」というコーナーがあり、東川在住の山関係者が山に関するあれこれを月替わりで書いています。もちろん私たちも執筆陣に名を連ねます。年に一度ずつですが私たちの軽妙洒脱かつ重厚長大な美文名文が掲載され、大人気を博しているようです。たとえば、10月31日に佐久間が書いた文章は最新号に載ったものです。熱い要望にお応えして、わたしが書いた分も出しておきますね。

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 夏の夜。夕涼みがてら街灯の灯る温泉街を散歩することがある。夜というのは不思議なもので、歩き慣れたはずの坂道の見慣れたはずの風景がいつもとどこか違って見える。日中、登山者で賑う歩道にも、ひっきりなしに車が往来する車道にも、今は誰もいない。少々心細くなってきたそのとき、突然森の中から不思議な音が聞こえてくる。何か金属をこすり合わせたような甲高くて短い音。それは・・・?
 愛らしいナキウサギちゃんだ。旭岳温泉街周辺の森はナキウサギの住処なのだ。



 大雪山においてはナキウサギは身近な動物の一つである。鳴き声はたいていの山で聞くことができるし、ちょっとの時間と根気があれば姿を見ることもそう難しくはない。中には登山道のど真ん中にのこのこと出てくるヤツもいる。足下の岩の隙間から上半身だけ出して周囲を覗っている姿を見たときには、可愛すぎて失神しそうになってしまった。そう苦労しなくても会えるニクイヤツ、温泉街にもやってくる身近なアイドル、それが大雪山におけるナキウサギ像だ。

 しかし、全国的に見ればナキウサギは珍しい動物である。日本での生息域は大雪山を中心とする北海道のごく一部に限られる。そもそも「氷河期の生き残り」などと呼ばれ、二つ名からして稀少感をたっぷり醸し出しているではないか。過去の寒冷期に北海道と大陸が陸続きとなったときに渡ってきたはいいが、それぞれが海峡で隔てられた今となっては帰れなくなってしまった、という悲劇がその由来だ。そう考えると、大雪山にナキウサギが住んでいることは、単に珍しいというだけの話ではないことがわかる。背後には長い長い地球の歴史が横たわっているのだ。

 ナキウサギも無駄に愛くるしいわけではない。今度、ナキウサギの声を聞いたなら、彼らが大雪山に住み着くまでに経てきたはるかな道程に思いをはせてみてはどうだろうか。

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普段とは文体を変えて書いていますので、ちょっと感じが違うでしょ?

2005-11-03

密やかに更新中

道東山旅編、密かに更新が進んでいます。まずは10月25日雌阿寒岳・26日摩周岳分ができあがりました。詳しくはそれぞれの日付をごらんください。
27日斜里岳と28日羅臼岳の分は、まずは写真だけ載せてあります。これも明日明後日には仕上げてしまいたいところです。

2005-11-02

プログラム報告更新しました

 10月23日「西クマネシリ岳」の山行報告を山樂舍BEARホームページにアップしました。
詳しくはこちらをご覧ください。

2005-10-31

2005年の紅葉

 以下は『広報ひがしかわ』11月号に掲載された拙文です。

2005年の紅葉

 大雪山に関わりはじめてすでに十年を超えた。この間「きれいだな」と思った紅葉は三回あった。1995年、1996年、2003年だ。90年代は、米の大凶作が社会問題になった93年以外は気候変動が顕著に現れなかったので、大雪山の紅葉はきれいなのが当たり前だった。それが、小雪と猛暑で木々の葉が茶変して落ちてしまった98年以降状況は変わり、年によって色づき加減が大きく変動するようになる。
 今年の紅葉はどうだったのか?人によって評価は割れるだろうが、筆者の判定は「優、良、可、不可」の四段階評価の「可」である。たしかに色づきはマアマアだったが、色に冴えがないというのがその理由だ。
 木々の葉がきれいに色づく条件は二つある。秋口まで緑色のパリっとした葉がついていること、紅葉時期に放射冷却による朝晩の冷え込みがあり、昼間との寒暖差が大きいことーーだ。木々の葉は信号機のように緑→黄→紅とは変化せず、いちど黄色くなった葉は茶変してきれいな赤にはならない。きれいに紅くなるには緑からいきなり赤に変色しなくてはならないのだ。そのためには朝晩と日中との寒暖差が必要になる。ことしの紅葉が「可」に留まったのは、朝晩の冷え込みが弱く寒暖差が小さかったせいだろう。
 紅葉の色づきが年によって大きく変化するようになったのは、気候変動と関わりがあると筆者はニラんでいる。原油価格が史上最高値を更新しつづけている今だからこそ、いれいな紅葉を見たかったら暖房の設定温度を下げ、CO2の排出を抑えて欲しい。

ただいま

先週の火曜日に出発した「ぶらり一人旅」。ちょうど一週間ぶりに今日ようやく帰ってきました。明日からぼちぼちその模様を投稿していきます。今日は300km以上のドライブですっかりお疲れです…

2005-10-30

世界遺産になった知床へ

  大雪山での仕事がひと息ついたので「世界自然遺産」に登録された知床ヘ行った。一泊二日という短い旅程で、初日はウトロ側の知床五湖を歩き、二日目は羅臼のビジターセンターで世界遺産登録前後の話を聞いた。シーズンももう終わりとあって、世界遺産登録で沸いた面影はすでになく、ときおり訪れる大型バスが、いまだに観光シーズンであることを思わせる程度の込み具合だった。
 羅臼のビジターセンターで聞いた話では、世界遺産登録で観光客が増えたのはウトロ側のホテルと観光船くらいで、羅臼側はほとんど変化なしということだった。ウトロ側のホテルでも、収容しきれなかったお客は斜里や網走に流れたので、たいした儲けはなく、喜んだのは、本州の大手旅行会社と飛行機会社くらいで、地元にはさほどお金は落ちていないのではないかという分析だった。
 この件については、後日詳しく書きたいと思う。

2005-10-28

道東山旅編4:羅臼岳

道東山旅も今日で4日目。出発以来の好天続きで、登りたかった山は全部登り、順調に知床まで移動してきました。今日はいよいよ最後の山、羅臼岳。天気予報によると今日も快晴になるようです。6年前にウトロ側から登った時には濃霧で全く何も見えなかったので、どんな景色が見えるやら期待が高まります。

今回は前回とは違うコースを使い、羅臼側から登ることにしました。羅臼の友人によると「長い・疲れる・飽きる」コースだそうで、利用する登山者もほとんどいないとのことでした。なにせ、登山口の標高が120mほで羅臼岳山頂は1661m。その差1500mを登って下るわけです。しかも距離も長く、往復で17km以上あるときています。むむむ。今年一番の難敵かもしれません。

スタートはキャンプ場から。登山口の標高が低いということで、まずはしばらく森歩きが続きます。尾根に取り付き高度を上げていくと標高500mほどで突然ハイマツが現れます。「ハイマツ原」というそうです。ハイマツやナナカマドの実を食べたであろうクマ糞を横目にさらに登ると、「第一の壁」という岸壁にたどりつき、ここからはなだらかなトラバースです。

このトラバースも2km以上あって、たいがい飽きてくるのですが、このあたりからようやく羅臼岳の山頂を拝めるようになります。トラバースを終えると沢に行き当たります。沢沿いに岩場を登ると写真の「泊場」に到着です。距離的にはここで半分を過ぎ、いよいよ後半戦という感じなのですが、実は標高差はまだ1000mも残っています。大雪山ならここから登りはじめるくらいの場所です。

距離が短い割に標高差はありますので、当然急登続きです。このあたりからは雪も融けずに残っていますので、歩きにくさも5割増し。山を登っていて久しぶりに「キツい」と感じました。

途中、雪の上に熊の足跡がありました。お、ここにも一つ、あ、あっちにも。と最初のうちこそ写真を撮っていたのですが、

こんなものを見てしまうと、ねぇ。斜面一面、目に入るところ全てに足跡が刻まれていました。大きいのも小さいのも。登りも下りも滑り降りた跡も。熊の親子の遊び場になっているのでしょうね。ハイマツ帯には実を食べ散らかした跡もあり、ここが熊の世界であることを思い知らされます。などと考えていると、すぐ近くのハイマツがガサガサ。姿こそ見えませんでしたが、これ、絶対熊です。「おーい」と声をかけるとハイマツの海をガサガサガサガサさせながら遠くの方へ去ってくれました。大雪山にも熊はいますが、ここまで近くに感じたることはありません。さすが知床、熊の本場。

熊の足跡をたどるようにして、最後の急登を登り、ようやく羅臼平に到着。あー疲れた。でもここまでくれば山頂まではもう一登り。雪をかぶった岩場を行きます。

そして、着きました、羅臼岳。前回見ることのできなかった山頂からの眺めもばっちりです。硫黄岳方面の山々はこんな風に見えるんですねえ。天気が良すぎて遠くがかすんでしまっていましたが、羅臼湖や国後島がよく見えます。羅臼の町も、登山口があるあたりも見えます。あんなところからよくもまあ。まだ下りが残っているのに、思わず今日を振り返ってしまいました。

おまけ画像1。無謀登山者。ちょうど羅臼平で出会った彼。ウトロ側から登ってきたようです。ジーンズ・スニーカー・荷物は小さなウエストバッグだけ。たぶん財布と携帯とペットボトルくらいしか入っていないでしょう。雨具はどうした、雨具は。地図は?コンパスは?誰か登山口で止めてあげられなかったのでしょうか?10月末の羅臼岳にこんな装備で登るのは自殺行為です。夏でもいけません。観光気分・散歩気分で山に登ってはいけませんよ。

おまけ画像2。シカちゃん。大雪山にもシカは結構いて、特に車道脇にいるのはよく見かけますが、こんな風に登山道に堂々と出てきて、しかも近づいても道を空けてくれないなんていうことはありません。手を伸ばせば届くくらいの距離になってようやく2~3歩どけてくれました。人慣れしているというのか、人なんて眼中にないというのか。

下山後、羅臼の町中から。結局山頂往復でまるまる8時間かかりました。最後のほうはホント疲れた…。降りたらアイス食べてやる。ジュース飲んでやる。などと食べ物を餌にがんばり抜きました。あそこまでの距離と高さを往復してきたと考えると、本当によく歩いたものです。よくやった。