2005-04-18

19年前の本

ここ数日で、昔買った本を読み返していました。もう10回以上読みましたが、それでもまだ時折目を通したくなるお気に入りの小説です。最近何かの書評で知ったのですが、その分野では史上ベスト3に入るほどの名作なんだそうで、何度でも読みたくなるのもなるほど納得という感じです。

またこれは、生まれて初めて自分で買った特別な本でもあります。忘れもしない昭和61年3月28日(記憶が良いわけではなく、最初のページに書き込んであるもので)。小学校卒業直後の春休みのこと。中学校で使う英語辞書を買いに行った先で、たまたま目にしたのがこの本でした。どうして数多ある本の中からこれを選び取ったのか、今となってはもうわかりません。帯か表紙か題名かそれともPOPでも貼ってあったのでしょうか。昔から本は好きでしたが、図書館で借りるか家にあるものを読むかくらいのもの。書店に行って自分で買ってくるなどは、当時の私の選択肢には入っていませんでした。そんな中、思わず買ってしまったのですから、よほど強く惹きつける何かがあったのでしょう。



文庫サイズのこの本を買ったとき、晴れがましいような気恥ずかしいような気持ちになったものです。小学校の図書室に並んでいた子供向けのハードカバー本とは違う大きさ。字も小さく挿絵もない。大人の本を読んでいるんだ、という誇らしさ。今考えると、精一杯の背伸びがほほえましいくらいです。

そして幸運にも、この本は一気に読み終えるほどおもしろかったのです。大人の本を読んでも大丈夫、とこれ以降本好きが加速したような気がします。たまたま手にした本が傑作だったというのは、幸福な偶然です。

ぼろぼろになって折り目から切れそうな表紙。紅茶をこぼしてしわしわになったページ。この本を読み返す度に、小学生だったころの気持ちが鮮やかに思い出されてきます。

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