2006-07-31

無音の世界

今週末8月5日(土)に行われる愛別岳ツアーの下見に行ってきました。

登山口の愛山渓に向かう途中、表大雪の山々が青空の下すっきりと見えています。今日も下見日和か、と期待がふくらみます。

登り始めも期待通り。小川が太陽を反射してキラキラしています。


永山岳への登りにさしかかり、振り返ると沼の平に明るい雲がかかっています。なかなか絵になりますな。


そこからぐいぐい登って標高1700mに至ると、永山岳が見えてきます。まだまだ登りますよ。

この写真を撮った直後にガスがもくもく。一気に視界が奪われます。


で、安足間から比布に続く稜線に出るころには、すっかりこんな感じに。


愛別岳への細尾根をたどっている間、ほんの一瞬だけガスが切れ、愛別岳の姿が見えました。もう本当に写真を撮る間だけの晴れ間で、またすぐガスに。


今日の山は、まったく静かな山でした。静かというよりは静寂というほうが近いかもしれません。風の音も、鳥の声も、虫が飛ぶ音も、何も聞こえないのです。立ち止まって目を閉じると、すうっと無音の世界が始まり、自分がどこにいるのかわからなくなるほど。目を開けていたって、このガスではほとんど同じことです。これに比べれば、今まで経験したどんなに静かな山だって、それなりに何かしらの音があったことに気づきます。

今日は登山口付近で4名ほど見かけた他は、永山岳への登りで一人とすれ違ったのみでした。その後は登りでも山頂でも下りでも、まったく誰にも会いません。おそらく、半径数kmというレベルで周囲に人がいなかったことになるはずです。人の気配がないことも、この無音の世界を作り出す要因だったのでしょう。

めったにないここまで静かな山。無音の山。ガスにまかれながら存分に楽しんできました。

つないだその手を離さないで

ガイドという仕事をしていると、たまに女性の手を握って山を歩くなんてことがあります。強風が吹きすさぶ時とか、急な下りが続く時とか、まあいろいろな場合があるのですが、ともかく、異性とお手々繋いで仲睦まじく一時を過ごすのです。役得ですな。

おっと、お相手の女性の年齢は聞きっこなしですよ。「妙齢」ということにしておきましょう。「妙齢」ということにしておいてください。

さらに、「もう私の手を離さないで!」と言わんばかりにぎゅーっと握りしめられたりもします。想いをこめて握られるので、私の手はこんなになるほどです。軍手の滑り止めのつぶつぶがめり込むほどに想われているわけです。これはこれで、手のツボが押されて健康になるので、さらに役得。リフレクソロジーというやつです。

女性から手を握られるわ、健康になるわで、ガイド稼業はなんとも恵まれているものなのです。

2006-07-30

春の名残、秋の気配

下界は夏真っ盛り。いかな北海道とはいえ、そこそこに暑い日が続いています。ところが、山の中では夏をとっくに通り過ぎ秋の気配を感じさせるものから、夏どころかまだ春になったばかりというものまで、さまざまな植物がそれぞれの季節に生きています。

今日行った美瑛岳でもそんな現象を目にします。
まずは秋の気配を感じさせるもの。

チングルマの綿毛。花を咲かせ受粉を終え実を結したところです。あとはこの実を綿毛に乗せて飛ばせば、今年のお役ごめんと言ったところ。

クロウスゴの実。山のブルーベリーです。もう少しでクマも大好きな甘酸っぱい実になります。

コケモモの実。ついこの前花が咲いたような気がするのですが。いつのまにやら実になっていました。しかも早くも赤く熟しはじめています。

どれを見ても秋の気配全開です。
さて、お次は春を感じさせるものたち。

なんとミネズオウ。6月中旬の山開き時期に目立つ小さな小さな花です。この時期になって見るとは思いませんでした。

エゾコザクラのつぼみ。これからようやく咲こうとしています。

春です。芽吹きの季節といった感じです。

実際には夏なのに春だったり秋だったりするのは、雪解けが早い場所か遅い場所かという違いが効いています。稜線に近いなどで積雪が薄い場所は早く雪が融け、一足先に春を迎えます。一方、谷地形など雪のたまる場所は雪解けが遅くなり、7月や8月になってようやく地面が顔を出します。そのため、距離的には近くても花の生長具合がまるで違う、という現象が起こることとなるのです。

おかげで、登山道を歩いているだけで1日のうちにいろいろな季節を楽しめるというわけ。山の涼風に吹かれて春の花・秋の実を見ていると、下界の暑さとは無縁の涼しい一時を過ごせますよ。

五色が原

五色が原へ行ってきました。

2006-07-29

朝日どきの旭岳

4時45分。日の出直後のこの時刻。朝日を浴びて薄桃色に染まる表大雪の山々を見て、思わず車を停めました。なんていい景色。

仕事の都合上、早起きになる夏は、こんな景色にお目にかかることが多くなる季節です。待ち合わせ時刻ぎりぎりで、車を停めて写真を撮る暇がないことの方が多いのですが・・・。

早朝の絶景をおさめるため、もうちょっと早起きしようかな?

2006-07-27

美瑛岳・美瑛富士

今週末、急遽催行が決まった「美瑛岳・美瑛富士」ツアー。朝から快晴の今日、下見に行ってきました。こんな日の下見は仕事の一環とはいえ、心浮き立つものです。まず、登山口までの移動からして楽しい。雲一つ無い山塊に向かって徐々に近づいていく時の気持ちは、山好きな人ならすぐにわかってもらえるでしょう。

今日の登山口は望岳台。今月は十勝岳往復のツアーが3本あったので、少々食傷気味な場所ではあります。とはいえ、目的地が異なれば避難小屋までの単調な道も新鮮な気持ちで歩けます。

スタート地点から早速目的の山が見えています。右が美瑛岳・左が美瑛富士。

雲の平ではエゾコザクラの大群落がお出迎え。よほど雪解けが遅かったのでしょう。ごつごつと岩がちな山で出会うお花畑は心を潤してくれるものです。

ポンピ沢を渡り、急登を登りきると美瑛富士との分岐に出ます。ここからまずは美瑛岳を目指しましょう。標高差400m、真上に見えているピークまで一気に登りますよ。ぜぇぜぇぜぇ。

どんどん遠くまで見えてくる展望にだまされながら、ようやく美瑛岳山頂到着。今日は平日でしたが、多くの登山者で賑わっていました。いつもより若い人が多い気がするのは、やはり夏休みに入ったからでしょうか。いいことです。

美瑛岳から十勝岳。この角度から見る十勝岳が一番かっこいい気がします。雄々しい、という言葉がぴったりくるような。

10分ほど休憩して、お次は美瑛富士を目指します。300m以上の下りと100m以上の登りが待っています。

美瑛岳に比べて、やけにひっそりとしている美瑛富士山頂。あまりに静かなので、お弁当を食べた後、1時間ほどお昼寝の時間にしました。下界ではうだるような暑さとなっていたようですが、こちらは雨具を着込んでもまだ涼しいほど。青い空の下、景色を眺めたり目を瞑って考え事をしたり、ゆったりと時が流れます。

眺める景色はオプタテシケだったり、美瑛岳だったり、この写真の通りニペソツだったり・・・。絶景です。

美瑛富士の山頂は平らで広く、ちょっと先まで散策できます。反対の端までぶらぶら行ってみましょう。

ちょっと角度を変えるだけで、先ほどは隠れて見えなかったトムラウシが現れました。手前のオプタテシケと奥のトムラウシが仲良く寄り添って見えます。実際、両者の間にはなかなか難儀な長い登山道が横たわっているのですけどね。

今週末、30日の日曜日。こんな素敵な景色を眺めに行きませんか?

2006-07-26

写真展に行ってきました

先日佐久間から告知があった「旭川ニコンMF党 結党写真展」。仕事続きで疲れた心と体を癒すため、休みを使って見に行くことにしました。さて、代表の出展した作品はどんなものなのでしょうか・・・?

写真展が行われているのは旭川は花咲町にある光画堂さん(地図はこちら)。住宅街の中にある静かな感じのお店です。

看板を見ると・・・

おお、やってますやってます。早速中に入ってみましょう。

こじんまりとしたギャラリーですが、明るくてゆったりと作品を楽しむことができます。壁にぐるりと出展作が展示されていますね。ちゃんとしたカメラで撮って、ちゃんとプリントされて、ちゃんと展示された写真を、ちゃっちゃっとデジカメで撮影するのはどうも気が引けてしまいますが・・・。さて、我らが代表・佐久間の作品はどこですか?

発見しましたよ。なんと2作品も飾られています。紅葉と残雪、大雪山の二つの顔を切り取ったもので、季節の移ろいが表れています。詳細は直接ご覧くださいね。

写真展は8月5日まで。お早めに!

裾合平

裾合平へ行ってきました。

2006-07-25

管理人顔?

いったい世の中に「管理人顔」というものがあるのでしょうか?あるとすれば、それはいったいどんな「顔」なのでしょう・・・?

先週末の2泊3日トムラウシツアーで、2日目に泊まったヒサゴ沼。昼過ぎに到着し、のんびり過ごしていると、来る人来る人に話しかけられます。「お支払いはこちらですか?」とか、「受付して欲しいんですが・・・」とか。最初は何のことやらわからなかったのですが、直接「管理人さんですか?」と聞いてくる人もいて、ようやく納得。どうも避難小屋の管理人に間違われていたようです。


ただ単にぼーっとしていただけで、特に管理人風の行動をとっていたわけではないのですが、何がみんなにそう思わせたのでしょう?外見だって、こんなにアーバンでノーブルでソフィスティケイトされているというのに・・・。

とはいえ、ちょうど土曜日で宿泊者でにぎわった避難小屋。せっかくですから、管理人になりきって全員から宿泊費をもらっておけばよかったのかも・・・?

2006-07-24

ぼちぼち更新

7月10日を最後にほとんど更新できていませんでしたが、ようやく時間が取れそうな感じです。これから過去にさかのぼってぼちぼち更新していきたいと思います。

まずは7月21日から23日のトムラウシ縦走分。今日は写真だけですが、明日か明後日には文章もつきますよ。ご期待あれ。

2006-07-23

トムラウシ3日目(ヒサゴ沼~天人峡)

さすがは土曜日、ツアーやら団体さんやらで賑わうヒサゴ沼。管理人と間違えられたり小屋ガス爆発の危機(※1)があったりマット不正使用疑惑(※2)があったりと、人が集まるところ何かと騒がしくなるものです(※1・※2:時間と機会があればいずれ書きます)。

そんな喧噪も治まる夜明け前。午前4時の大雪山はまたまた素晴らしい景色を見せてくれました。

朝焼けの雲とヒサゴ沼避難小屋のシルエット。

うっすらと桃色に染まった雪渓が、ぴたりと凪いだ沼に鏡写しになっています。

ヒサゴ沼越しに見るニペソツ山。朝焼けの空と朝焼けの沼。

ほんと、山に来たときには早起きをするものです。早朝の景色ほど心を打つものがあるでしょうか。

一瞬で消えゆく朝焼けを満喫したあとは、名残惜しくも下山に取りかかります。まず目指すは化雲岳。

途中、ウルップソウが水辺に咲いていました。

振り返れば、1日目に歩いた稜線が見えています。一歩で進む距離はたかだか数十cmなのに、それが積み重なってよくもこんなに歩いたものです。

化雲のへそから旭岳。化雲岳に着く頃には、モクモクとガスが出てきました。その間隙を縫って遠望を楽しみます。

化雲岳直下に朝露のエゾルリソウ。ちょうど見頃となっていました。化雲からポン化雲に至る登山道は、今まさに花盛り。エゾルリソウ・コマクサを筆頭に様々な花があなたを待っています。

ポン化雲から先は皆さんご存じの通り。激しく続くぬかるみぞ。そしてどこまで続く登山道。もうイヤ、というくらい下りの道を堪能しなければ、下界には下りられない仕様になっています。しかもちょっぴり雨模様でした。

この度の2泊3日トムラウシツアー。ガスの中だったり雨が降ったりで、実際に晴れていた時間はそう長くはありませんでした。でも、ポイントとなる時と場所でしっかりと晴れてくれたおかげで、全体としては天候が良かった印象です。めでたしめでたし。

存分に楽しんだ大雪山の深奥部。さて、今度はいつ行けるかな?

2006-07-22

トムラウシ2日目(南沼~ヒサゴ沼)

全天に輝く星の下、過ごした夜。一夜明けると期待通りの青空が広がっていました。トムラウシに登り、ヒサゴ沼を目指す、まさに縦走核心部を行く今日。昨日以上に天候に期待がかかります。

朝の南沼野営指定地。色とりどりのテントが並びます。登山口の車の数ほどには宿泊者は多くないようです。

朝日と薄雲を背負うトムラウシ。今まさに日が昇ろうとしています。さっそく山頂を目指しましょう。重い荷物は置いて軽やかに出かけます。

途中、振り返ると南沼が見下ろせます。晴れた日の沼は青く輝いて格別です。雲海に見え隠れする山並みもなかなか。

あこがれのトムラウシまであとわずか。一歩一歩と近づいていきます。

そしていよいよ登頂成功!山頂の碑が青空の下に。ついに念願叶いましたね。

1時間ほど山頂で過ごし、思う存分楽しんだら、一路下山。南沼野営指定地まで引き返して、再び重荷下の人となります。

野営指定地直近の沼。ほとりのお花畑が絶品です。一面のエゾコザクラとミヤマキンバイ・・・

そして北沼へ。この沼の広がりはとてもコンパクトデジカメで撮れるものではありません。いつまでも休憩していたくなるような、そんな場所です。

残念ながらこの先、またしてもガスにまかれました。しかも時折の降雨もあり、日本庭園あたりは逃げるように通り過ぎてきました。ああ、もったいない。

でもでも今回は要所々々で景色を見せてくれることになっているようです。これからヒサゴ沼に下りようかというその時、雨が止み霧が晴れ沼の全景が現れたのです。

いいぞ!天候!明日もよろしく!

2006-07-21

トムラウシ1日目(扇沼山~南沼)

日帰りでは一月前に行きましたが、山中泊縦走だとちょうど1年ぶりとなるトムラウシ。今回はお客様お一人だけのプライベートガイドです。俵真布林道を使って扇沼山から入山し、三川台を経由、南沼・ヒサゴ沼でそれぞれ宿泊し、天人峡に下るコースです。2日目の核心部をゆったりと過ごせるのがポイントなのです。出発前の1週間ほどはぐずついた天候が続いていましたが、はたしてこの2泊3日はいったいどうなるでしょうか。

扇沼山の登山口には今まで見たことがないほど沢山の車が停めてありました。7月後半の金曜日。混むのも当然の時季です。旭川では霧雨が降っており、気持ちも重く沈んでしまいそうでしたが、登山口ではまぶしいほどの朝日が降り注いでいました。幸先いいかも。

と言った舌の根も乾かぬうちに、扇沼山頂ではガスがかかってきました。硫黄沼も見えそで見えない感じになっています。むう。崩れてもらっては困るのですが。

と思ったら、カブト岩を越えて三川台に登り返す頃には、青い空とまぶしい太陽に再開。待ってましたよ。このまま続いてくださいよ。

という願いもむなしく、またしてもガス。三川台から南沼に至る平らな稜線上ではまったく遠望が効かなくなってしまいました・・・。いい景色が拝めるところだと言うのに。なんとかして!

という切なる想いが届いたのか、トムラウシまであとわずかの南沼まで来たとき、すーっと霧が晴れていきました。感動的な一瞬です。こういうとき、ありがとうという感謝の気持ちは誰にささげればいいのでしょう。

なんというか、天候に一喜一憂・右往左往させられて、どっと疲れたトムラウシ縦走1日目でした。明日こそ全晴れでよろしく。