2010-12-30

山納めは穏やかな一日

昨日は今年最後の山行の日。本州からいらっしゃったお客様をご案内して、旭岳山麓は天女が原付近の森をスノーシューで散策してきました。

前日の予報ではお天気はさほどでもないようなことを言っていましたが、ふたを開けてみれば驚きの好天。青空にはぷかぷかと綿雲が浮かび、早い時間には旭岳の山頂まで見ることができたのです。


しかもそれだけでなく、ほのかな陽気でぽっかり暖かでした。展望台で景色を眺めつつにぎやかにお昼休憩を取っていたら、気がつけば1時間が経っていたほど。こんなにゆっくりできるのはせいぜい3月以降のことで、12月には低山でも30分休んでいられたら良い方なのです。

それでいて雪はサラサラふかふかとしていてスノーシューの楽しさを感じさせてくれました。最高の条件だったと言えるでしょう。

2010年 もいろいろなことがありました。天候不順は相変わらずで、1月に雨が降ったり9月に真夏日があったり。8月の集中豪雨で主要な林道が通行できなくなりもしました。今も今で積雪が少ない状態です。でも、こんな風に一年を終えることができるなら、そういった諸々をすっかり水に流してすっきりさわやか新しい年を迎えられそうな気がします。

とはいえ、山行が納まっても事務仕事が納まるわけではなく、31日ぎりぎりまでやらなければならないことが待っているのですが。

今年も一年お世話になりました。みなさま良いお年をお迎えください。

2010-12-28

彩雲

山行中に青空を見上げると、鮮やかな色に染まった雲がぷかぷかと漂っていました。


緑と赤の二色に染まっているように見えます。こういう雲を彩雲というのですね。雲に含まれる水滴で太陽の光が回折するためにできるそうです。

12月の末にお天気になるだけでもありがたいことなのに、こんな雲まで見られるとは。思いがけず良い日となりました。

2010-12-25

山の中のクリスマス

今日は読図講座の実践編ということで噛伊尻という山に行ってきました。天気予報に反して見事な快晴の中を熱心な生徒さんたちとお勉強しながら歩き、

最初の休憩のとき、お客様がザックの中から取りだしたのは、シュトーレン。ドイツのクリスマス菓子です。

そう、今日はクリスマスでした。最近クリスマスとは縁遠い生活をしているので、お裾分けでもしていただかなければ、25日がただただ過ぎ去っていってしまいます。おかげで少しメリーな気分を味わうことができました。

赤い帽子でも用意してくれば良かったかな?

2010-12-22

少雪の中の下見

週末に控えている読図講座・実践編の下見に行ってきました。目的地は噛伊尻。和寒町と鷹栖町との町境に位置するタカス峠から歩き始めます。

もう何度も歩いている山なので、地形図も地形も頭に入っているのですが、敢えて下見に行くのは積雪状況を確認したいから。昨日のニュースで言っていましたが、今現在の旭川の積雪は平年の半分しかないのだとか。つまりかなりの少雪なのです。標高はタカス峠270m、噛伊尻577mとともに低く、そもそも登山道のない山ですので、あまりに雪が少なければ歩けない可能性があります。

それならどこか他の標高の高い山にすればいいじゃない、と思われるかもしれませんが、タカス峠から噛伊尻に登るルートには読図講座の実践編を行うのに極上の条件が揃っているのです。今までいろいろな山を歩いてきましたが、ここ以上のコースはちょっと思い当たりません。

何がそんなに良いかというと、
1、あまり標高差のないピークとコルがある
2、尾根が大きく方角を変える箇所がある
3、顕著な支尾根の合流(分岐)点がある
4、傾斜が大きく変化する箇所がある
5、それらの地形的特徴がごく狭い範囲に集中していて次々と現れる
のです。

この中で最も重視されるべきは5番です。初学者にとって地形図と地形を照合できる機会は多いほど良いからです。体力的にも余裕を持てるので、読図だけに集中できることにも繋がります。

だから、やっぱり積雪が少なく笹がガンガン出ているものの、なんとか歩けることが確認できてホッとしました。

 雪はほんの30cmしか積もっていなかったのですが、先日の暖気とそれに続く寒気でギュッと締まっています。雪を通り越して地面まで足が届いてしまうようなこともなく、この積雪深としてはまずまずの歩きやすさと言っていいでしょう。

読図講座・実践編の本番は土曜日。熱心な生徒さんたちですから、気合いを入れて望まなければ。

2010-12-19

旭岳スキー場の様子

12月に入ってからというもの、事務仕事が忙しくて机に貼りつく毎日を過ごしていました。頼みの週末も読図講座でやはり室内。

2週間以上もこもった末、ようやく今日初冬山に行くことができました。行き先は旭岳。スキーで積雪の状態を確認です。

ロープウェイ山麓駅から川を渡ってすぐの雪尺。積雪は130cmくらいでしょうか。まだ笹が見えています。積雪深は昨年の年末とほぼ同じです。

第一天女が原のエゾマツ林。ここからの景色は正しく大雪山麓という感じ。雪をまとったエゾマツを見ると、今年も冬シーズンが始まったと実感できます。

第二天女が原。スキーコースでいうとAコース・Bコースの合流点となります。Aコースは公式にはまだ滑走禁止ですが、ほとんどの利用者がこちらの斜面を滑ってきています。

旧中間駅に置かれた雪尺。ここでの積雪深は190cm。昨日から今日にかけて30cmほど新雪が積もったようです。

垂れ込めていた低い雲が過ぎ去って青空と太陽が現れました。明るく照らされるエゾマツ三姉妹。

真っ白な雪は真っ青な空とよくお似合いです。Bコース脇の斜面。

ロープウェイ山頂駅での積雪は2mくらい?

旭岳は6合目あたりがぎりぎり見える程度。姿見散策をするには充分な視界があります。

14時40分山麓駅付近での気温はー4.4℃。風もなく、ほとんど寒さを感じませんでした。

2010-12-14

関東甲信山行・14日目 横浜-札幌

11月29日(月) 快晴

早朝の横浜駅。今年の山旅も今日でおしまい。あとは羽田空港に直行して北海道行きの飛行機に乗るだけです。北海道は大荒れと天気予報で言っていましたが、ちゃんと帰れるでしょうか?取り合えず急ぎの仕事はないので、気持ちの余裕だけはあります。北海道に着陸できず、仙台あたりに降りるようなことになったらいいかも・・・。まだ行ったことのない街だし。

今年は本当にお天気に恵まれた2週間でした。毎日のお天気を振り返ってみると、晴れ・快晴・雪・快晴・快晴・快晴・雨・曇り・快晴・快晴・晴れ・曇り・快晴・快晴ですから、集計は以下の通り。
 快晴:8
 晴れ:2
 曇り:2
 雨・雪:2
ちょっと恵まれすぎかもしれません。

来年はどこに行こうかな?11月半ばで雪がなくてしかも長い縦走ができる山は、そろそろ本当に打ち止めではないでしょうか。もう南半球に行くしかない?妄想を胸に秘めつつ、冬山のお仕事がそろそろ始まります。

関東甲信山行・13日目 鎌倉-横浜

11月28日(日) 快晴

今日は一日神奈川観光して、その後夜遅くの飛行機で帰道しようと思っていたのですが、どの便も満席だったので、もう一泊して明日朝早い便で帰ることにしました。

友人宅を辞し、地下鉄・電車を乗り継いで藤沢駅。ここから鎌倉、横浜と移動してそれぞれ若干歩いてまわる計画です。

藤沢から鎌倉まで行くのに何気なく江ノ島電鉄を選んだのですが、これが大失敗。いえ、ある意味大成功?江ノ電って、それ自体が観光名所なのですね。始発の藤沢駅にはガイドブックを手にした観光客の人だかりができていて、乗り込むとぎゅうぎゅうのすし詰め。ひなびたローカル線くらいにしか考えていた私は大甘でした。こんな人混みのなかに大きなザックを持ち込んでごめんなさい!

鎌倉に到着したときには心底ほっとしました。これで周りの人にご迷惑をかけなくて済む・・・。駅で荷物を預けて身軽になって、鶴岡八幡宮に参拝します。続々とやってくる七五三参りの家族。ポカポカ太陽が照って、気持ちよくおでかけできる陽気です。11月既に寒さ厳しい北海道では七五三はあまり盛んではないので羨ましくも感じます。

本宮へ続く大石段の前に立派な舞殿があり、そこで結婚式が行われていました。歴史のある建築物で結婚式とは、これまたすごいものです。

大石段を登って本宮へお参り。観光客と参拝客が入り乱れる独特の雰囲気。

今年3月の強風で倒れた大銀杏。散々ニュースで見せられた銀杏の木はこれだったのですね。少し離れた場所に移植され、今では再び緑の葉が茂っていました。

帰りは段葛を通って。町中の散歩道としては上等の部類ではないでしょうか。

JRに乗ってわずか20分であの神社からこのビル街へ。横浜駅近くに宿をとり、桜木町経由で中華街までてくてく歩きます。

有名な横浜の中華街。ここもまたたくさんの人で賑わっています。以前海外を旅していた時に、いくつかの国で中華街を訪れましたが、当時のことが懐かしく思い出されました。

関東甲信山行・12日目 鍋割山-塔ノ岳

11月27日(土) 曇り

昨晩12時を過ぎてから飲み始め1時頃ようやく寝たというのに朝5時起床。これから友人と丹沢に歩きに行くのです。さすがに眠い・・・といいつつも、体が勝手に支度を始めています。

丹沢。名前は聞いたことがありますが、いったいどんな山域なのかはさっぱりわかりません。今回は連れて行ってもらうだけのお客様登山なので、地形図も持たなければ下調べもしないというありさま。ちょっとしたミステリーツアーという感じです。

地下鉄・電車・電車・バスと細かく乗り継いでやってきたのは、丹沢の玄関口(たぶん)大倉。わらわらと沢山の登山者で賑わっています。レストハウスの一角には入山受付の列ができています。ただ紙が置いてあって、勝手に書いて出していくのではなく、受付係として3人もの人が出てきているというのは、ずいぶん力が入っているよう思えます。お天気の土曜日で人出が予想されるからでしょうか。

友人によると今日の行程は、大倉-二俣-鍋割山-塔ノ岳-大倉尾根ー大倉というもの。どんなコースなのかはよくわかりませんが、周遊というだけでちょっと嬉しい気分です。民家を縫って舗装路を進むとやがて畑が広がるようになり、行く手に山塊が見えてきます。目指す塔ノ岳は雲がかかっているあたりでしょうか?

四十八瀬川沿いの林道を延々1時間歩いて二俣着。ここからさらに30分沢沿いに進んでようやく尾根に取り付きます。話し相手がいるから良いようなものの、1時間半もの林道歩きというのはあまり嬉しいものではありません。

取り付きから標高差150mを登って後沢乗越まで来ると、ようやく尾根歩きが始まります。紅葉に彩られた尾根道は落ち葉がフカフカで、やっぱり山歩きはこうでなくてはと思わされます。

それなりに急登もありますが、淡々と進んで鍋割山荘に到着。友人によるとここのご主人がかなりすごい方で材木などを全てご自分で運んでこの小屋を建てたのだとか。にわかには信じられません。小屋の中にも外のベンチにも、草原にも沢山の人が休憩しています。名物・鍋焼きうどんを食べている方も多いようです。暖かそうなうどんを横目に先を急ぎます。

鍋割山から塔ノ岳に至る登山道は広くて気持ちの良い稜線につけられています。ここにきてガスがかかってきてしまいましたが、それを差し引いても歩いて楽しい道です。

ゆるやかに登り下りを繰り返す途中にこんなものが。鹿による食害を防ぐために一角を網で囲ってあります。網の内外の状況を見ると食害のひどさは一目瞭然。網の中は一面笹がびっしり茂っているのに、網の外(登山道)側には背の低い草本しかないのです。大雪山でもトムラウシの直下で鹿を見かけることもありますが、鹿の問題は場所を問わずに広がっているようです。

塔ノ岳への最後の登り。ガスの中へ突き進んで行くと、

意外と広い山頂。奥には立派な尊仏山荘があり、手前側にもう一つ建物がありました。

鍋割山以上に賑わう塔ノ岳山頂。北海道でこれだけ人口密度の高い山頂はおそらく真夏でもありません。少なくとも大雪山では旭岳・黒岳両ロープウェイ駅舎くらいのものでしょう。みんながみんなガスバーナーでお湯を沸かしているのが壮観でした。北海道と比べると明らかに若い人が多くて、活気があって良い感じです。休憩しているうちに太陽が射してきました。陽光の暖かさを総身に浴びて暖まったところで出発。

下りは大倉尾根をぐんぐんと。現在の登山道と平行して以前使われていたであろう道が見えるのですが、その侵食されっぷりには驚かされました。悠に人一人分の深さあり、数人が並んで歩けそうな幅あり。侵食を食い止めるために設けられた人工物の数々も見事です。侵食が止まり堆積が始まっていて、草本が根付いている箇所もありますので、一定の成果はあったのでしょう。

大倉尾根の特徴は、一に急登、二に侵食、そして三つ目が次々と現れる小屋。ほんの二時間ほどの下山中に山頂含めて6つも小屋があるのですから驚きです。最も間隔が短いところで15分しか離れていませんでした。まあ、小屋と言っても宿泊ではなく休憩を主にしているようなのもあるのですが、それでも日帰りの山に小屋がある時点ですごいことではあります。

かなり下まで下ってきてようやく見えた神奈川の街並み。こう見ると、丹沢もなかなか深い山であることがよくわかります。

朝とは逆に、バス・電車・電車・地下鉄と乗り継ぎ、今日も友人宅にお世話になります。いい汗かいたから今日もビールが美味しいに違いありません。


今日の行程
大倉-鍋割山-塔ノ岳-大倉
 08:12 大倉 発
 09:19 二俣 着
 10:06 後沢乗越 着
 11:04 鍋割山 着
 12:19 塔ノ岳 着
 12:53 塔ノ岳 発
 13:54 駒止茶屋 着
 14:59 大倉 着
所要時間:6h47
  登り:3h07
  下り:2h06
歩行距離:17.2km
累積標高:±1685m

関東甲信山行・11日目 東京

11月26日(金) 晴れ

朝5時起床。手早く入浴を済ませて6時オープンのコインランドリーへ行きます。洗濯機を回している間に早朝から開いているファストフードで朝食。山から下りたというのに日の出前から結構忙しいものです。

もろもろ後かたづけを終えて、宿を出て、再び立川駅。今日はこれから都心部へ行って、お土産購入と山道具屋巡りをして、夜になってから横浜の外れの友人宅へ転がり込む予定です。山を歩くよりも疲れるかもしれません。

関東甲信山行・10日目 東京

11月25日(木) 快晴

登山道が終わると舗装路に出て、舗装路を歩くとすぐに民家があって、少し歩けば町中まで行けるというのは、北海道とは異なる本州の山の特徴ではないかと思います。奥多摩もそんな登山口の町。縦走から下りた先がこんな開けた町だなんてさすが本州という感じですが、一方で東京にも都会の匂いのない場所もあるのだなあと驚きもします。

温泉の日帰り入浴で5日間の汗を流してから駅へ向かうことにします。服を着替えてさっぱりして、これで本当の意味で山行が終わりました。振り返ってみると、八ヶ岳も奥秩父も快晴に始まり快晴に終わったのですから、今年はお天気に恵まれたと言っていいでしょう。ありがたいことです。

奥多摩駅発の便は1時間に2本のみ。券売機の前で料金表を眺めている時にちょうど出発していったので、30分は待たなければなりません。どおりで慌ただしく改札を抜けていく人が多かったわけです。まあ生粋の道産子たるもの、公共交通を待つ30分なんて待ち時間のうちには入りません。むしろ、そんなに早く次の便が出てくれるの?という感じです(ちょっと大げさ)。

ベンチに座ってぼんやりしていると、次から次へと登山者・ハイカー風の人が来るわ来るわ。山を歩いている途中にはほとんど見かけなかったのに、いったい皆さんどこを歩いてきたのでしょう。数日ぶりの人の波に圧倒されてしまいます。電車に乗ってからも停まる駅ごとにどんどん乗ってきて、右を見ても左を見ても登山者ばかり。これで平日なのですから、さすが大都会の登山人口は違います。

青梅で乗換。今日は立川に泊まることにしました。9日前、東京から長野へ向かう途中、特急の車窓から見た街並みが予想外に栄えていて印象に残っていたのです。ここなら奥多摩からも近いし、街も大きいから飛び込みでも簡単に空き部屋が見つかるだろうと目星をつけていました。立川駅で降りると、車窓から見たよりもはるかに大きな都会がそこにはありました。旭川以上札幌未満?というか比較対象に旭川を持ってくるのは申し訳なさすぎです。すごいなあ。23区からはるかに外れたところにもこれだけの街があるというのは本当にすごいことです。

人の少ない山からいきなりこの人並は少々刺激が強すぎだったかもしれません。おとなしく奥多摩か青梅に泊まって慣らしたほうが良かったかなあ。

2010-12-12

関東甲信山行 奥秩父縦走全行程


 行程所要時間歩行距離累積標高
11/21瑞牆山荘-大弛小屋6h0010.5km+1390m / - 538m
11/22大弛小屋-甲武信小屋5h5310.6km+ 968m / - 974m
11/23甲武信小屋-笠取小屋6h2812.2km+ 798m / -1378m
11/24笠取小屋-奥多摩小屋8h3821.1km+1966m / -1989m
11/25奥多摩小屋-奥多摩6h0618.3km+ 751m / -2159m

33h0572.7km+5861m / -7038m

関東甲信山行・10日目 奥秩父縦走5

11月25日(木) 快晴

飛び交う飛行機と小屋の発電機の音が妙に耳についた昨日の晩。晩と言っても、せいぜい7~8時くらいのものですが、夜の山で人工的な音を聞いた経験がなかったので、少々驚いてしまいました。表大雪もすぐ近くに旭川空港がありますが、山中泊をしていても物音一つ聞こえません。さすがは大都会・東京の山というべきでしょうか。

日の出前にテントを出ると、頭上には満月をやや過ぎた月が照っていました。

そして、日の出を見ながらのテント撤収。昨晩はかなり乾燥していたようで、フライシートがカラッカラに乾いていました。最終日にテントが濡れていると、帰宅してからの後かたづけが大変になりますから、これはとてもありがたいことです。

朝陽に燃えるテントサイト。木々も地面も何もかもが薄紅色に染まっています。

今日もまた富士山を間近に見ることができました。本当にきれいです。

下界は低くたれこめる雲海の中。まさに雲の海というにふさわしい様子です。小高い尾根が島のように浮かんでいます。

月・日の出・朝焼け・富士山・雲海。山行最終日の朝はありとあらゆるものを見ることができた感じです。

今日は奥多摩小屋から奥多摩駅まで下る6時間程度の行程です。昨日頑張って長く歩いたのでその分行程が1日短くなり、今日下山することになりました。

最初いきなり登り返しがありましたが、その後は基本ピークを通らない巻き道続き。登りがほとんどないので楽と言えば楽なのですが、その代わり下りもあまりないのでひたすら平坦に歩かされる感じです。登山道自体は広く、見晴らしも良く、快適に歩くことができます。

歩いている最中は汗ばむほど暑い一方、立ち止まると途端に冷えてきます。休憩中あまりにも寒いので、もう飲むこともあるまいと水を半分捨てました。魔法瓶のお湯さえあればいいと思ったのです。ところがこれが裏目。その直後にぐっと標高が下がり、かなり暑くなってしまったのです。冷たい水が美味しく感じるほどに。まったく間の悪い・・・。

広葉樹の道はやがて針葉樹の植林の道に変わりました。晩秋の日を透かす深い緑。

植林が尽きると再び広葉樹の林となり、モミジの赤や

黄葉が目を楽しませてくれます。今年の紅葉は9月に北海道で楽しみ、10月に新潟で愛で、11月に東京で締めるということになったということですね。

舗装路に出るとやがて奥多摩の街並みを見下ろすことができます。一瞬、歩き終えた感慨に耽りそうになりますが、ここからも結構長いんです。もう一歩き、最後に頑張りましょう。


今日の行程
奥多摩小屋-鷹ノ巣山避難小屋-三ノ戸山-奥多摩
 06:50 奥多摩小屋 発
 07:58 千本ツツジ 着
 08:47 鷹ノ巣山避難小屋 着
 10:00 将門馬場 着
 11:06 三ノ戸山 着
 12:56 奥多摩 着
所要時間:6h06
歩行距離:18.3km
累積標高:+751m/-2159m

2010-12-08

関東甲信山行・9日目 奥秩父縦走4

11月24日(水) 快晴

昨日のラジオでしきりに冷え込む冷え込むと言っていましたが、たしかにテントには霜がびっちりと着いていました。バリバリと音を立てながら外へ出ます。最初に目に飛び込んできたのは真っ青な空でした。たなびく巻雲がまだ低い太陽の光を映して橙色に染まっています。この二日間、雨やら雪やら霧やら雲やらに包まれていたので、よりいっそう爽やかに感じる朝です。

今日の行程はまだ決めかねていました。小屋のある場所、テントを張れる場所が半端な間隔にしかないからです。一つは4時間ほどで着く将監小屋。もう一つは10時間ほどかかる雲取山避難小屋。4時間では物足りないし10時間だと飽きるしで、帯に短したすきに長しというやつです。6~7時間くらいが好みなのですが、なかなかそう上手くいくわけではありません。

そんなわけでずっと迷っていたのですが、頭上に広がるすっきりとした青空を見た瞬間に心が決まりました。「よし、今日は歩く!」と。そうと決まればぐずぐずしていられません。急いでテントを撤収して歩き出します。

昨日歩いてきた道をわずかにたどって稜線に戻ります。まだ日陰になっている登山道上は霜と霜柱で真っ白になっています。

左手に見える山は二日前に歩いた国師ヶ岳。山頂付近は真っ白に冠雪しています。登山道はすぐに分岐して、一つは稜線上を笠取山へ向かう道に、もう一つは多摩川源頭・水干を通る道に分かれます。

このあたりの登山道は「源流のみち」と名付けられているようで、かなり幅広く平らに均されていて遊歩道的に歩きやすくなっています。30分もしないうちに水干に到着。ここで多摩川最初のひとしずくが滴り落ちるのだと看板に書いてあります。さすがに今は冬なので滴る水を目にすることはできませんでした。

反対側はすぐに沢となり深く切れ落ちています。この谷に落ちていく水はここから東京湾まで100km以上の長い旅をするのです。私も東京へと向かう身ですから、たどる道は違えど同じ目的地を目指すもの同士と言えるかもしれません。そんな感慨に耽りながら何とはなしに顔を上げると、そんな感傷的気持ちを一瞬で吹き飛ばすような景色がありました。

富士山です。上に青空、下にたなびく雲を従えた姿は端正そのもの。東から射す陽光が白く輝く雪に微妙な陰影をつけているのも見事です。この存在感・貫禄は圧倒的です。富士山に登って、山岳の高さを語れ。大雪山に登って、山岳の大(おおい)さを語れ。大町桂月が書き記した一文は私たち大雪山に関わるものにとってはごく知られたものですが、実際に目にするとたしかにその通りでした。しかもただ高いだけでなく、秀麗さ包容力をも持ち合わせているように思えます。

標高も低くなってきているので歩いていても基本遠望が効きませんが、それだけに時折木々の切れ間から見える山がいっそう美しく見えます。稜線に雪を連ねているのは南アルプスでしょうか。

気持ちの良い広場風の将監峠。3時間かからずに着いてしまいました。ここから将監小屋まではわずかの距離ですから、いくらなんでもここまでしか歩かないというのは短すぎます。今日の目的地を雲取山避難小屋にしたのは正解でした。

将監峠から雲取山の間には竜喰山・大常木山・飛龍山・三ツ山と標高2000m内外の山が連なっていますが、登山道はいずれの山頂も通りません。ここから先は延々と山腹をトラバースし続けるのです。途中数回鞍部で尾根にかすりますが、すぐにまた稜線から離れて絶対にピークを目指したりはしません。この割り切りようはいっそ潔く清々しいほどです。

飛龍山直下の分岐に至って、初めて雲取山の名前が現れました。いよいよこの縦走も終わりが見えてきた感じです。

その標識を越えてすぐ雲取山の姿を初めて見ることができました。あと2時間ちょっとというところでしょうか。最後の一頑張りです。

沢があったり岩がちだったりするところは立派な橋を整備して、とにかく執拗にトラバースを続けます。このあたりの整備はかなり行き届いていて、今日も崩れかけた登山道の補修工事が行われていました。

悠に3時間トラバースし続けて、ようやく稜線上を進むようになるのは狼平のあたり。登山道の左右にカラマツが立ち並ぶさまは遊歩道然としています。

踏みしめる落ち葉の音はやっぱり良いものです。足にも優しいですよね。

雲取山への最後の登りでちょっと苦労しましたが、今日の目的地・雲取山避難小屋には15時少し前に着くことができました。思ったよりも時間はかかりませんでした。この避難小屋はとてもきれいで居心地良さそうで、今日はテントではなくここに泊まりたいと強く思いました。でもこの小屋の近くには水場がなく、そして今日は一泊できるほどの余分な水を持ち歩いていません。つまり残念ながらここには泊まれないということ。

悲しい気分は置いておいて、小屋のすぐ裏にある雲取山の山頂を訪れます。

雲取山は東京都と埼玉県の境となっているため、両自治体の名を刻んだ標識が山頂のあっちとこっちにそれぞれ建てられています。些細なことですが、北海道では見ることができないので、面白く感じます。

富士山はここからも望むことができます。一日ずっと見守られていた気分です。

歩いてきた方向。ガスがはい上がってきているのが飛龍山。そこから右奥に向かって稜線が延び、一番奥の平らなあたりが甲武信岳。左に移動して中央奥が国師ヶ岳。頑張って歩いてきたものです。

雲取山避難小屋は諦めて、水場がある奥多摩小屋まで広い稜線を下っていきます。もう終わりと思ったところからさらに歩かなければならないというのは精神的にキツいものがあります。内心グチグチ言いながら奥多摩小屋までは30分の道のりでした。


今日の行程
笠取小屋-将監峠-雲取山-奥多摩小屋
 07:00 笠取小屋 発
 07:29 水干 着
 08:55 唐松尾山 着
 09:47 将監峠 着
 11:04 1847m 着
 12:22 三ツ岩 着
 13:34 狼平 着
 14:59 雲取山 着
 15:38 奥多摩小屋 着
所要時間:8h38
歩行距離:21.1km
累積標高:+1966m/-1989m