2012-01-02

広報『ひがしかわ』1月号

東川町の広報『ひがしかわ』1月号「大雪山の素顔」に拙文が掲載されています。原文とは仮名遣い等が若干違っておりますので、以下、原文のまま掲載いたします。
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   朽ちてゆく避難小屋

 本州の主要な登山コースでは、半日から一日行程に一軒または複数の山小屋があり、登山者はそれぞれのペースに応じて宿泊先を選択できる。「山小屋」とはいえ、なかには収容人員が1000人ちかい巨大なホテル並みの施設もある。山小屋は基本的に営利目的の営業小屋で、寝具や食事の提供はもちろん、生ビールやおでんを食べられたり、自然エネルギーで作った電気でバロック音楽を聴ける山小屋もある。極端な話、お金さえあれば、雨合羽と水筒だけで山中泊の縦走ができてしまう。
 これに対して大雪山の場合、営業小屋は黒岳石室(いしむろ)一軒だけ、他はすべて避難小屋で、シーズン中管理人が常駐するのはこの石室と白雲岳避難小屋のみである。黒岳石室は営業小屋とはいえ、大正時代に建てられた、まさに「石室」で、昼なお暗い小屋内は湿気が多く、お世辞にも快適とはいえないが、暴風雨が吹き荒れているときでも、小屋内に留まる限りは安全が確保されるので、山小屋としての要件は満たしている。
 ところが、残念なことに、避難小屋としての最低限の要件さえ満たしていない施設が、大雪山にはある。表大雪のほぼ中央に位置する忠別岳避難小屋だ。旭岳からトムラウシ山まで縦走する場合、初日に白雲岳避難小屋に泊まり、二日目にヒサゴ沼避難小屋、三日目にトムラウシ温泉へ下山というプランを立てる登山者が多いが、白雲岳避難小屋からヒサゴ沼までは距離が長く、足が遅い人は一日でたどり着くのが辛い。そんな登山者にとって、中間にある忠別岳避難小屋は利用価値が高い。
 その忠別岳避難小屋がいま倒壊の危機に瀕している。数年前から屋根のトタンが剥がれ、雨漏りしていたのだが、年々これが酷くなり、今年の夏には、一階の床が抜けて土台が腐り始めていた。このまま放置すれば数年以内に倒壊するだろう。管理者である北海道(上川総合振興局)は、事態を把握しているはずなのだが、いまだに対策はとられていない。

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